2016年7月27日水曜日

7/25 わたしたち

毎回毎回、私たちの母語で書かれたスラング混じりの言葉によって中国を非難する最悪の言葉を、そんなこと思っていないのに言わざるを得ない、そして聞かざるを得ないその状況が続いてしまっても大変なので、という理由ではないのですが、その日の稽古は、皆が思い思いの場所に机を出して、それで、自分の言葉で中国について何かを書いてみる、という事になりました。


普段あまり書くことがないですが、稽古場の雰囲気というか、受講生の雰囲気なのですが、彼らは基本的に静かで、そして、ゆったりした時間を過ごすし、そもそも、あまり大きな声で皆で盛り上がっている、という状況を、そんなに見たことがありません。
だからといって見かねて、仲悪いの?と聞くと、そうではないらしいのですが、傍から見てると、とても1年たって仲良くなった的な雰囲気を全く感じない、のですが、たぶん結構仲良さそうです。机の配置はバラバラでした。


そんな静かな、というか、ゆったりとした人たちが、最近の稽古では、死ね、と言っています。あとは、クソ、と言っています。その他ですと、ゴミ、とか、そういったことを言っています。その言葉は、けっして、その出演者によって感じて、出演者が自分の気持として言っている言葉ではない、のですが、しかし、実際にブログや2ちゃんねるなどにかかれた、現実の言葉である以上、大枠の中で、それはわたしたちの言葉として聞かれてしまうのでしょうし、もしかしたら、その私たちというのは、観客席も含めた、わたしたち、という集団のことばとして、その悪口は聞かれることになるかもしれません。

7/11 7/13 公演情報公開!チケット発売!


ベチパー
劇研アクターズラボ+村川拓也
『Fools speak while wise men listen』


演出|村川拓也
出演|穐月萌 石井花果 北野万里奈 城間典子 諏訪七海 野村眞人 山本悟士
   and more

中国と日本を巡る、村川拓也+ベチパーによる新作公演!


日程
2016年9月23日(金)~9月25日(日)


9月23日(金) 19:00 
9月24日(土) 15:00/19:00
9月25日(日) 17:00

開演30分前より受付、開場。
※未就学時のご入場はご遠慮いただいております。


料金 

一般 前売:2,000円 当日:2,300円
学生 前売:1,500円 当日:1,800円


チケット

チケット窓口:アクターズラボHP
お問い合わせ:080-1485-6805(9:00〜20:00)

7/6 text/textile


それはそれとして、中国語のテキストを丸暗記したり色んな事をしている今回のクラスですが、現状、何をするか、というか、何になるか、ということがいまいちまだ判りかねている今回の作品について、ひとつだけ予想されることは、日本語と中国語によって話される言葉のあいだの距離感が、そこには見えるかもしれない、ということです。

距離というものは決して見えるものではなくて、遠くにいる相手が小さければ遠いし、大きければ近い、という遠近法で私たちは距離を見るわけですから、そこで見られているものは遠さや近さ、ではなく、大きさや小ささを見ることでその隔たりを計算し、だからこそ、遠近法の比例を逆手に取っただまし絵などを作ることも出来るわけです。

大きいものや小さいものを、しかるべき場所に配置することによって何かの距離を定める一点遠近法のような技術は、奥行きを含めた全体性の構築ではあるのでしょうが、言語にとっても遠近法は存在していて、何を伝えるために何が前に見えてくるのか、何が後ろに来るのか、考える必要がありますが、私たちがこの稽古場で使っている様々な言葉は、ネットの、書いた人も書かれている場所も書かれた日付も、そして書かれている言語も全て違った言葉が、ひとつの場所で様々に語られるのは、きっとそれらのTEXTは、順序立てられて論理的に並べられる、ひとつの直線になるのではなく、それぞれの線が交錯し絡みあうTEXTILEとして、時間の拡がりではなく空間的な拡がりの中で聞かれることになるのかもしれません。


7/4 STORY/HISTORY



今回の作品では、戯曲は使われる予定はありません。
それというのも、近年の村川さんの本公演からすれば、昨年行われた「人形の家」の上演が特殊なことであり、今回も、戯曲を使った公演、という案も出なかったわけではないですが、それがどうして行われなかったかといえば、それは単純に、やはり、村川さんの関心の中に「戯曲」ということよりも、別の事があった、ということになるのでしょうけれど、では、その関心とは何か、というと、中国、あるいは中国と日本のあいだにある距離、などの言葉になるのかもしれません。


しかし、劇研アクターズラボはそもそも、俳優のための演劇講座、というようなコンセプトがありますし、俳優はそうなると、戯曲があって、それを上演する、ということが、やはり普通の俳優としてのあるべき姿、と一般的にはそう考えるの当然といえるのかもしれませんし、第一、俳優が戯曲やその他の、例えば物語の中の人物として存在しなければ、それは演劇なのか、という問いも現れてくるかもしれません。


とにかく、今回の稽古場では戯曲に書かれた言葉は使われず、そこで、代わりに何の言葉が使われているか、というと、ネットに書かれる様々な悪口、罵詈雑言、レッテル貼り、などなど、ここでちょっと引用して紹介するのもはばかられるような様々に趣向を凝らした悪態、が口にされていて、そこには戯曲に書かれるような物語(STORY)は存在していないのですが、そのヘイトな文章が積み重ねられている状況は、私たちの現在のひとつの状態であり、生きている今の時間であり、何よりこれまでに過ごされてきた歴史(HI-STORY)がその稽古場では上演されつつある状態です。