2015年7月23日木曜日

7/20-7/22 劇場に初めて来る人へ


佐伯隆幸、という演劇批評家がいます。その人は劇場を「都市の病理」と言いました。


劇研アクターズラボ+村川拓也 ベチパーの人形の家ですが、出演者の多くは学生で、また、今回が初舞台という人もちらほらおりますので、もしかしたら、そんな出演者の誰かから誘われて、初めて演劇を、しかも小劇場で、しかも古典的なテキストを、さらに現代的な演劇の方法で、となると、二の足を踏んでしまっている方がいるかもしれないかもしれません。なので今回は趣向を変え演劇を見ることにためらっている方へ。

劇場を、怖いところ、と思う人は今どき少ないかもしれませんが、実は劇場は怖いところです。
多くの場合、劇場の壁に窓はありません。それに上演中は大抵、入り口のドアは閉められていますから、劇場は外から隔離された場所、隠された場所、そしてもしかしたら、隠さなければならない場所かもしれません。
もしかしたら劇場に来たことがない皆さんが知らないうちに、見ちゃいけないようなことが起きていたかもしれないし、とんでもない驚くようなこと、皆さんが見たこともないようなすごいことが起きていたかもしれないけれど、残念ながら、上演は四方を壁に囲まれて、都市の中で隔離された小さな場所だけで行われます。
劇場の外から、劇場の中は見えません。外からは何が起きてるかわからないところで、皆さんが見たことがない、よくわからないハチャメチャなことが起きる可能性がいつもそこにあります。なにせ「都市の病理」ですから、普通とは違う、違和感ばかりがそこにはあるかもしれません。


今時の演劇はよく分からないし、それは自分の頭が悪いんじゃないか、なんて思ってしまう人は以外と多いようですが、是非ともそんなことは気にせず見に来て欲しいと思います。
稽古場で村川さんは、よく分からんけどおもしろい、と時々口にしていますから、ぜひ観客席の皆さんも、よくわからない、と小さな声でつぶやいてください。
そして、よくわからなくても面白いものは沢山ある、とちょっと気楽になってみてください。
《12345679》に一桁の好きな数字を掛け算して、それに9をもう一度掛け算すると、選んだ数がずらっと並びます。電卓でぜひ試してください。理由はわかりませんがちょっとだけ楽しいです。
12345679 × 5 × 9 = 555555555 になります。理由は知らないので調べてください。多分すごく難しいです。でも、わからないことに驚いて、難しいことを考える、というのも演劇の楽しみの一つです。



演劇を難しいんじゃないかと思う人は多いと思います。
まさしくその通り、演劇は難しいものですから、難しそうで嫌だなあと思う人こそ見に来て欲しいと思います。
ギリシャ悲劇の話からすれば3000年近くも遡らなければなりません。それだけ長い歴史の中で、ああでもない、こうでもないと、本当にたくさんのほとが演劇について考え、書いたり、演出したり、感想を言い合ったりして育まれてきました。

ちなみに、言うまでもないことですが、3000年の長い長い歴史の中で、一番多かったのは演出家でも俳優でも劇作家でもなく、それを見ていた観客の皆さんです。演劇は、やる人と、それを支える人と、見る人でやっと出来上がります。


受講生は9月の本番の為に、というか、ということは、見に来てくれる皆さんのために最近は6時間くらいずーっと稽古をしていますが、やっぱり見に来てくれる皆さんがいないとどうしようもありません。
なので、皆さんのご来場、こころよりお待ちしています!


http://www.gekken.net/actorslabo/cn31/murakawa.html

2015年7月16日木曜日

7/15 そわそわしました



なんというかとにかく、そわそわ、というか、はらはら、といった感じでして、村川さんの稽古の特徴、というか、よく起きること、という方が正しいような気がするのですが、何かというと村川さんは急に長い時間、黙り、受講生達はそれを、待つ、という状況が頻発しつつ、今回の受講生の皆さんはそれに慣れてきたのか、もともとそういった待つ時間に慣れているのかわかりませんが、まあ、普通に待ってくれていて、エアコンの音や外を走る車の音がよく聞こえてくるそんな時間は、例えば初対面の人と二人っきりの個室だったりすればまさしく堪え難い時間ではありますが、そういった時間に村川さんが何を考えているのかは普段はあまり判らず、口を開けば「なるほど!」と、膝を打つような答えを教えてくれるというよりは、受講生と同じように人形の家のテキストの上で同じように迷っている、という感じなので、講師というよりむしろ誰よりも率先して道に迷うベチパーの一員のような作品への取り組み方で日々稽古は進むのですが、今回アトリエ劇研で初めて稽古をしてみて、今、かなり深い場所で道に迷っているのでは? しかも、村川さんだけでなく、自分を含めてこのクラスの全員で! と思ってしまうような稽古になったのはつまり単純に、今までの狭い場所でやっていたことが広い空間で改めてやるとなんだか全然感じが違って、おお、これは! と、なんというかとにかく、そわそわ、というか、はらはら、といった感じでして、村川さんの稽古の特徴、というか、演劇の稽古は数十分の上演時間のために何ヶ月も稽古を積み重ねるのでそれは演劇の特徴なのかもしれませんが、昨日の稽古は開始2分くらいのシーンを、いったいどんな新しい方法で出来るんだろうか、ということのために、何度も何度も、同じことの繰り返しとしての稽古が進み、実は本番まで50日くらいしかないのに、大丈夫だろうか、と、なんというかとにかく、そわそわ、というか、はらはら、といった感じでして、村川さんの稽古の特徴、ではないのかもしれませんが、とにかくその場で起きることについて考え、やってみて、ダメだったり良かったり、と、まっすぐな遠回りと言いましょうか真面目な道草と言いましょうか、その場で発見された新しいアイデアをやってみては別のことを始め、その迂回の途中に現れる新しさの萌芽は、なんというかとにかく、そわそわ、というか、はらはら、というか、わくわくしてくることもあったりするのですけど、そのわくわくはまだ可能性として、思いもよらない道草の可能性とともに取り返しのつかないような迷路の途中、という可能性もあったりするのかもしれませんが、なんというかとにかく、そわそわ、というか、はらはら、といった感じとはまるで無関係のように、受講生は「私劇研のホールに入るの初めてなんですー」とそんな話をしていたりおもむろにサンドイッチを食べ初めて劇場で飲食はちょっとアレですのでとエントランスに出てもらったり客席の椅子を重ねて積む時に結構荒っぽく扱ったりするものですから、なんというかとにかく、そわそわ、というか、はらはら、といった感じでして、とにかくそんなあっけらかんとした受講生達とじっくりテキストに向かう村川さんのなんとも不思議なバランスをとりながら、迷いながら、新しいことを初めては、やっぱりそれについてまた悩んで、と、同じことの繰り返しとして、初めての劇研6時間稽古はまずは終わったのでした。

2015年7月15日水曜日

7/13 稽古再開しました


劇研アクターズラボ+村川拓也、ベチパー稽古再開!


と大々的に始まりたいところですが、7月12日の稽古で何をしたかというと、今後の自主稽古、と言っても村川さんも普通に参加するので追加稽古ということでしょうけれど、稽古日程を作るだけで二時間かかってしまいましたので、エクスクラメーションマークなんかをつけて「いよいよ再開!」となるのは本日13日からとなりそうですが、稽古日程を作るのも二時間ぐらいは当たり前にかかってしまうのも仕方がないことなのは、今回の受講生は10人、それぞれ働いていたり他の団体の公演に出演していたり学校に行っていたりとか、とにかく人がたくさん集まる場所でなにかを決めるのも大変なことなのでした。


何はともあれ講師の村川拓也さんの本公演、エヴェレットゴーストラインズも終了し、今回の受講生もそれぞれ見に行っていたらしいのですけれど、芸術センターの公演を見に来てくれたお客様の皆さんには、ぜひ今回の劇研公演にもご来場いただきたいなあと思うのは、ドキュメンタリー的な手法で、演劇らしい方法から積極的に離れようとするようなエヴェレットゴーストラインズとは反し、というか、露骨に演劇的な「戯曲」を使用して上演される今回の「人形の家」にとって、その「戯曲」はそれがあるからこその人形の家であるとはいえども、戯曲を使用する、というのは上演にとって、極端に言えば「戯曲」こそが演劇にとって不自由で深刻な足枷になってしまうということも往々にしてあり、端的に「エヴェレットゴーストラインズ」と「人形の家」が持っている自由の尺度というか、演劇であることの不自由を観客席でぜひ体感してほしいと思うのでした。


もちろんそれは、自由にその作品を読むことができる、そして今の時代においてテキストは自由に読まなければならない、というそれ自体が「自由であれ!」という命令=不自由であることすら内包したテキストに挑戦することになる「人形の家」の稽古はいよいよ再開で、この記事を書いている7月15日の夜はアトリエ劇研にて稽古が行われる予定になっていますので、受講生の皆さんにはちゃんとメールもしましたが、ぜひ会場を間違えず、暑いし、いつもよりちょっと遠いけど、なんとか劇研までたどり着いてほしいと思うのでした。

2015年7月2日木曜日

6/29 京都芸術センター『エヴェレット ゴーストラインズ  4バージョン連続上演」


いよいよ人形の家のチケットも発売し、これからどんどん宣伝! と意気込んでいるところで急に関係のない話題、というわけではないのですが、このクラスの講師である村川拓也さんの公演が、京都芸術センターにて上演されます。


---------------
---------------

『エヴェレット ゴーストラインズ  4バージョン連続上演」

【日時】 2015年 7月10日(金)-7月12日(日)


10日(金)19:30 ver. A「赤紙」
11日(土)19:30 ver. B「顔」
12日(日)14:00 ver. C「記録」
     17:00 ver. D「集団」

※受付、開場は開演の15分前。

【会場】 京都芸術センター フリースペース
【料金】 前売・当日共に2,000円(全席自由)
     ※半券提示+500円で別バージョンの観劇ができます。


【チケット取扱】 メール予約   tommy@chikin-base.com
         ウェブサイト チケット予約フォーム
         京都芸術センター(10:00-20:00)窓口販売のみ 


----------------
----------------

前作のエヴェレット ゴーストラインズでは、演出家が本番の事前に30人程度の人々に、指示が書かれた手紙を送るという事が行われ、さらに、手紙を受け取った人々はこの指示に従うか従わないかの選択は本人の意思に委ねられている。必ず従わなくても良い。もし指示に従わない場合は、当日劇場に来なくてもいいというルールのもと、何かしらの出来事を起こそう、そのための物語や演出や細工やトリックやテクニックなど、そういった「関与」を最小限に抑え、何かしらの「影響」を及ぼす事を極限まで抑えようとしたそれは、まさしくヒュー・エヴェレットが専門にした量子力学が失敗した二重スリット実験の結果のように、観察されない、そこに見る事のできない状態の可能性は、最後まで可能性として論じるしかなく、観測結果が得られるためには、実験器具や方法などの「関与」がなければ観測できず、その観測結果は、観測方法に左右されてしまう、つまり、道具の関与によって結果が変わってしまう事が浮き彫りになったそれのように、まさしく「関与」と「観察」による臨床的/科学的な公演だったのですが、今回はその『エヴェレット ゴーストラインズ』が持っていた、手紙という唯一の「関与」の方法をさらに突き放す「4バージョン連続上演」という新しい方法によって、関与を最小限に抑えるのではなく、積極的に関与の方法を模索する、『エヴェレット ゴーストラインズ』が《エヴェレット ゴーストラインズ》の核となる方法を否定し更新する新しい上演になっています!

村川ラボの公演前に、新作/再演の狭間で軋む村川拓也によるぜひぜひお見逃しなく!

【エヴェレット ゴーストラインズ webページ】 http://e-g-l.jimdo.com






6/24 講師:村川拓也おさらい/エヴェレットゴーストラインズおさらい


前に人形の家のおさらいを、リンクを貼るという簡単さで、まるでおさらいが終わりました、というように逃げてしまったわけですが、もちろん、内容を知らずに演劇を見たい、という人への配慮なんかもあって、もちろんそのあらすじを知っていようが知らずにいようが、本番は間違いなく面白い! と自信を持って言えるのですが、それはともかく、講師の村川拓也さんのプロフィールを書いていない、ということに気がつき、今回はプロフィールをアクターズラボのサイトから転用したいと思います。


村川拓也
演出家・映像作家。
1982 年生まれ。2005 年、京都造形芸術大学卒業。2009 年まで、地点に演出助手として所属。独立後は演出家として活動を開始し、ドキュメンタリーやフィールドワークの手法を用いた作品を様々な分野で発表している。主な作品に 、『ツァイトゲーバー』 ( F/T11 公募プログラム、大阪市立芸術創造館/2011、2012) 、ドキュメンタリー映画『沖へ』 (2012)、『言葉』(F/T12 主催プログラム)、AAF リージョナル・シアター2013『羅生門』(2013) 、『エヴェレットラインズ』(2013)など。『ツァイトゲーバー』は各地で再演され、2014 年5 月にはHAUHebbel am Ufer(ベルリン)の「Japan Syndrome Art and Politics after Fukushima」にて上演された。セゾン文化財団助成対象アーティスト。アトリエ劇研アソシエイトアーティスト。


という講師の村川さんの公演が、京都芸術センターで行われます!!
来週末の公演ですが、ぜひぜひ皆様こちらもご予約くださいませ!

次回のブログでは、KYOTO EXPERIMENT 2014で上演されたエヴェレットゴーストラインズのおさらいをします!
まだまだご予約受付中です!
京都芸術センターにて行われる、村川拓也『エヴェレットゴーストラインズ』をお見逃しなく!


----------

KYOTO EXPERIMENT 2014にて上演された村川拓也の最新作『エヴェレットゴーストラインズ』。今回はただの再演ではなく、新たにつくられた4つのバージョンを連続上演する試みです。初演のコンセプトは引き継ぎ、この作品をある一つの演劇の形式であると捉え、その形式に4つの新しいアイデアを投げ入れることによって本番ごとに異なる作品を生み出します。前回同様、出演者が未定のこの作品は、演劇の不在性または世界の不確定性に向かって新たな実験の場となるでしょう。(『エヴェレットゴーストラインズ』特設サイトより)



【日時】 2015年 7月10日(金)-7月12日(日)

10日(金)19:30 ver. A「赤紙」
11日(土)19:30 ver. B「顔」
12日(日)14:00 ver. C「記録」
     17:00 ver. D「集団」

※受付、開場は開演の15分前。

【会場】 京都芸術センター フリースペース
【料金】 前売・当日共に2000円(全席自由)
     ※半券提示+500円で別バージョンの観劇ができます。


【チケット取扱】 メール予約   tommy@chikin-base.com
         ウェブサイト チケット予約フォーム
         京都芸術センター(10:00-20:00)窓口販売のみ 

6/22 チケット発売!


今この記事が書かれているのは、実は7月2日です。

昨日より、アトリエ劇研にて行われますこの劇研アクターズラボ+村川拓也
《ベチパー》による第一回公演 ヘンリックイプセン原作『人形の家』のご予約が開始しました!
予約フォームはこちらから↓
https://www.quartet-online.net/ticket/etdukkehjem


---------------

劇研アクターズラボ+村川拓也
ベチパー 第一回公演『人形の家』

原作:ヘンリック・イプセン
構成/演出:村川拓也

出演
穐月 萌/井上 拓哉/近江 就成/押鐘 楓/北野 万里奈
城間 典子/武内 もも/野村 眞人/東川 菜/渡辺 祐子


■日時  2015年 9月4日(金)~6日(日)

9月4日(金) 19:00
9月5日(土) 15:00/19:00
9月6日(日) 15:00

※開演30分前より受付、開場
※未就学時のご入場はご遠慮いただいております。


■料金 

一般 1,800円(前売、当日とも)
学生・ラボ受講生1,300(要学生証)

---------------

みなさまのご来場、こころよりお待ちしています!
どしどしご予約くださいませ!


6/17 人形の家 チラシが完成しました!



人形の家のチラシが完成しました!

表面のイラストは受講生の東川さん、チラシデザインは劇研アクターズラボ+あごうさとしクラスの担当の脇田くん、キャッチコピーは人形の家のノーラさんです!

もう間も無く皆さんのお手元にお届けできると思います!
ご予約はこちらのサイトからアクセスください!
みなさまのご来場、こころよりお待ちしています!

http://www.gekken.net/actorslabo/cn31/murakawa.html



6/15 もうすぐ、村川ラボ2期の募集が始まります。


劇研アクターズラボ村川クラスは、今回の人形の家だけで終わりではありません。
三年間あります、三年間で三回、アトリエ劇研にて公演を行います。


今回の人形の家で第1期のクラスはおしまいですが、同じ 9月末には、説明会を行い10月から公演を行います。


webページはまだ出来ていませんが、実はチラシが出来ています。
募集要項などについては追ってアクターズラボサイトにて公開します。


今日はとりあえずチラシの画像だけお先にお目見えしようと思います。




チラシは2種類です。
間も無く募集開始です!
詳細はアクターズラボ+村川拓也クラスにて!

6/10 人形の家 おさらい

今日は人形の家のおさらいです。

ネタバレではなく、おさらい、という方が正しいハズで、というのも、もちろんどんな話か知っている人も知らない人もいるのでしょうが、なにせ100年も前に書かれ、様々な形で上演され続けたこの「人形の家」について、いまさらストーリーというかあらすじというか事のあらましをここで書いたところで、怒られる事はないだろうし、もちろんどんなお話かを知らずに芝居を見る事が好き! という方はさっと読み飛ばしてくれればいいだけで、なにより、あらすじを知ってしまったからと言って、今回のベチパーによる「人形の家」の面白さが無くなるなんて事はまるで無いし、というか、どんな話か知った上で見に来ていただいた方が、不意打ちのような驚きがたくさんあると思いますので、もし、あらすじを知る事に抵抗が無い方は、このリンクからあらすじを見てみてください。

まずはウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/人形の家

続いてアマゾン
http://www.amazon.co.jp/人形の家-岩波文庫-イプセン/dp/4003275012


というか、「イプセン 人形の家」と検索すると、驚くほどの量の個人ブログがヒットして、本当にたくさんの人が色々な読み方をしていて、たくさんの解釈や感想がたった一冊の本から、この一冊の本に書かれている文字の何百倍の量の言葉で書かれている、ということに改めて驚くのですが、とにかくそんな多彩な読みを誘うこの人形の家を、劇研アクターズラボ+村川拓也クラスでは、9月に上演をするために日々アクセクとこのテキストにアクセスしているのでした。